博士の理不尽な日常、第8話  kei 2001/04/30



みなさまこんばんわー。
このお話も、終わりが近いようです。
其れも其のはず、今回で番外編を入れると10本目ですからねぇ。
ちょっとしんみりします。
そうそう、人気投票の結果はっぴょーです。
それでは、第3位
ソフィアさーん。わぁーぱちぱち。
今回の主役です。大人の魅力でしょうか?
男性読者様に大人気ですW
続いて、第二位
ペディさーん。
世の中には熱烈なレイキャシールファンの方がいらっしゃるようで御座いますー。
そして、第一位!
我らが鉄面皮ジャド兄さん!!
アーニーキー!!
ってか、どういうことだぁ!?
なぜ彼なのですか??
そうそう、ちなみに博士は最後まで下のほうをうろうろしておりました。合掌。
皆様、沢山の御投票有難う御座いますー。
えと、バックナンバーを
KANNA様のHP
http://www.mitene.or.jp/~kanna/
及び
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http://www.geocities.co.jp/Playtown-Toys/2267/
及び
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http://www.rock.sannet.ne.jp/youhei/

にて転載していただいておりますー
まことに感謝です。
それでは参りましょう、どーぞー

_______________________________8年前。
母星にある、とある企業の研究機関。
「みんな、聞いてください。」
細身で長身の白衣を来た男が傍らに少女を伴い部屋に入ってくる。
「今日から私たちのメンバーが一人増えます。・・・さぁ挨拶をお願いできますかな?」
「は、はい! ゎ、私はソフィア・アーカディアと申します! よ、よろしくおねがいします!」
そう言うと顔を赤らめながら、可憐な少女は頭をぴょこんと下げる。
「彼女は、かのアーカディア家の御息女で、この度ご両親であるアーカディア博士夫妻がパイオニア1に乗り研究にいかれる事になり、其の間、私の元で預かることになりました。」
そう言って、白衣の男は少女の肩に手を置くと、やわらかい笑顔を少女に向ける。
「大丈夫、みんな良い人だからすぐに仲良くなれますよ。」
そういうと、白衣の男は研究員の一人に少女の案内を任せると、自分の研究室に帰っていった。

博士の理不尽な日常
第八話、ひなたの思い出。

とととととととと・・・・・・
少女が大量の本を抱えて、廊下を走る。
彼女の名はソフィア・アーカディア、この研究施設に来て1ヶ月である。
「あら、ソフィちゃん。一人で大丈夫?」
「ハイ大丈夫ですー。よいしょ・・・」
心配そうな女性職員に笑顔で返すと、ソフィことソフィアは目的の研究室に向かって再び走り始める。
ところかわって、ここは目的の研究室。二人の研究員が話をしている。
「ソフィちゃんって可愛いよなぁ。」
「しかも、15歳で大学を卒業、おまけに名家のお嬢様なのに其れを鼻に掛けない健気な態度。」
「くぅ〜。ソフィーちゃーん、ぼ、ぼきのお嫁さんにぃー!」
「君らは一体なにをやっておるのかね?」
二人の後ろに、影ががすっと寄ってくる。
「はうっ! ケ、ケイオス博士・・・それはその、なぁ!?」
「えぇ! もう研究ですよ! 決まってるじゃないですか!!?」
「ほぉ。研究ね・・・エンサイクロペディア?」
彼が呼び出すと、一体の青いレイキャシールがやってくる。
「はい。なんでしょう博士。」
「悪いのですが、監視システムのログを見せていただけますか?」
「かしこまりました・・・」
そう言うと、この施設のシステムの全てを統括する青いレイキャシール、エンサイクロペディアは手近の端末に掌をかざし、先ほどの顛末を映し出す。
「なんとも、有意義な研究ですねぇ。君たち・・・」
博士は、にやぁっと顔をゆがめると手元のボタンをぽちっと押す。
「あーれーー!!」
2人の若者が足元に突然あいた穴へと飲み込まれていった。
「ふっ・・・ドクターケイオス謹製特別懲罰房で反省なさい。」
そう言うとこの研究所の責任者、ケイオスは白衣を翻して部屋へやってきたソフィに向き直る。
「あぁ、こんなに沢山の本を・・・本当にすみませんでしたね。重かったろうに・・・」
「いえそんなことないです、ケイオス様。私が自分から言い出した事ですから。ところで・・・」
「私の事は博士で良いよ。なんですかな?」
「今の方々は、宜しいのでしょうか?・・・なんか、可愛そうです。」
博士は一瞬、不思議そうな顔をすると、端正な顔を崩し其の手をソフィの頭の上に置く。
「優しいのですねソフィは・・・アーカディア博士が調査船に乗るのを渋るわけです。」
礼をいながらヒョイとソフィの抱えていた本を抱えると、博士は自分の部屋に帰っていく。
「と、そうだ。お手伝いはもう宜しいですので、エンサイクロペディアや他のみんなと遊んでらっしゃい。」
ドアから首だけ出してそう言うと、博士は部屋に引っ込んでいった。

・・・

「うーん・・・。」
ソフィは研究所の中庭に来ていた。
晴れた昼下がり、この荒廃した惑星において、もっとも贅沢な場所の一つで何をするでもなくソフィはほうけていた。
と、傍らに黒いヒューキャストが近づく。
「あら、ジャド様。お仕事ご苦労様ですー」
「仕事だけが俺の存在理由だからな。」
ジャドと呼ばれた黒いヒューキャストの仕事は、エンサイクロペディアの護衛である。
それは、施設の護衛と同義であるわけなのだが・・・
「えぇ〜?ジャドさんは仕事じゃ無くても、きっとペディちゃんの傍にいますよーきっと。」
「ペディ・・・ちゃん?」
エンサイクロペディアが、一瞬狼狽する。
「そ、エンサイクロペディアってなんか長いですし、物の名前みたいで私は嫌だから、貴方は今からペディちゃんです。」
ぴっと、エンサイクロペディアを指差してソフィはそう言い放った。
「ソフィア様・・・お言葉ですが私は命亡き物です。ですから私にそんな・・・」
「もう! そんなこといわないの。ペディちゃんはペディちゃん、そのかわり私のこともソフィア様じゃなくてソフィで良いよ。」
腰に手を当てて、人差し指を立てながら少女は少し怒ったようなそぶりでエンサイクロペディアに語りかける。
「は、はぁ・・・」
今度は本当に困惑して、エンサイクロペディアには返す言葉が見つからない。
「ジャドさんもそう思いますよねぇ。」
事の成り行きを傍らから見ていたジャドにソフィが訊ねる。
「われわれアンドロイドに余計な機能は要らん。メモリーの無駄だ。」
「そんな事無いです。きっとそんな事無いんです・・・」
「むぅ・・・!?」
泣き出してしまうソフィ。対処の分からないジャドが、彼には珍しく落ち着きを無くす。
「わかった、貴様が正しい・・・だから、頼むからその、泣き止んでくれ・・・この通りだ頼む。」
「わかってくださればいいんですー。」
平謝りするジャドにニッコリとするソフィ。ドクターケイオスの最高傑作達もこの少女には、かなわないようであった。

・・・

「博士。まぁた、若い奴らに酷い事しましたねぇ? 只でさえ人手が足りないってのに。」
ここは博士の専用研究室。薄暗い部屋に、大量の資料と計器が乱雑に詰まれている。
古参職員の一人であるフォニュームのヤギゾーが、博士に愚痴をこぼしていた。
「やぎちゃん、文句言う前に働いてくださいな。只でさえ厄介なもの押し付けられて大変なんだから」
「外宇宙からの未知物質ねぇ・・・。博士、これは本当に大丈夫なのかい?」
「分からないから、人払いしたのではないですか・・・やぎちゃん以外の職員には別の研究をしてもらうよ。こんな危険なことさせられないからね。」
「ひどいなぁ。僕は、被害に会ってもいいのかい?」
「何もまだ、危険と決まったわけではないですよ。それに・・・」
件の被検体を、眺めながらにやぁっと顔をゆがめる。
「やぎちゃんは見てみたくないの?」
「もちろん。・・・見てみたい。」
そう言うとヤギゾーは煙草に火をつけると、ふぅっと一息、まるで自分に呆れたかのように両手を空に向けるのだった。
「ところで博士。ソフィちゃんは?」
「ふむ、多分中庭だと思いますが・・・?」
「へっへっへ。僕もソフィちゃんに惚れた口だよ。」
その後、懲罰房行きが一人増えたのはいうまでもない。
と、そこへエンサイクロペディアがやってくる。
「博士、御用でしょうか?」
「あぁ。これの調査を手伝って欲しくてね。やってもらえるかね?」
博士が後ろの被検体に親指を向ける。
其れを見て、少し怪訝な顔をするエンサイクロペディア。
「博士其れは?」
「私にもわかりませぬよ・・・ただ。」
くるりと後ろを振り返る博士
「たいがい、危険なものには違い在りませぬな。」
言葉とは裏腹に、彼の表情は新しいおもちゃを手に入れた子供のように嬉々としていた。
「分かりました。とりあえず、物質鑑定のための基礎調査を一通りやっておきます。」
「あぁ、頼んだよ。其の間、私は少しここを離れてもいいかね?」
「承知しました。お帰りは何時ほどになりますでしょうか?」
「そう遅くはならないよ・・・。では、頼んだよエンサイクロペディア、それにジャド・・・。」
物陰からすっと出てきたジャドと、既に作業を始めているエンサイクロペディアに、そういい残し博士は部屋から出て行くのであった。

・・・

コンコン。
「博士ーいらっしゃいますかぁ?」
ソフィが博士の個室を再びノックするも返事は無い。
「どこか出かけちゃったのかしら・・・。」
と、そこへ若い職員たちがどやどやとやってくる。
「あ、ソフィーちゃん。」
「僕ら今からお昼食べにいこうと思ってたんだけど、一緒に行かないかい?」
「そうそう、博士も出かけてるみたいだしさー。」
「あの、実は博士と食べようと思ってお弁当作ってきちゃってるんですー。」
申しわけなさそうに答えるソフィと、余りの衝撃に動揺する研究員たち。
「ソフィちゃんの手作り愛妻弁当・・・。」
「博士・・・自分ばかりいい思いしおって・・・!」
「こうなったら、抗議だデモだ、ストライキだー!!」
「博士はどこにいる?」
「きっと個人用研究室に違いないぃー!」
「いくぞー!!」
いきり立つ研究員たち。と、其の時
「どこに行くんですか・・・?」
研究員の一人の肩にポンと手を置いて、微笑む博士。
『・・・・・・・・・!!!!』
驚愕し声も出ない哀れな若者たち。
「何人ものの大人が少女一人を困らせるとは、見過ごせませんねぇ・・・。」
懐から、すっとボタンのついたコントローラーを取り出す。
研究員たちの脳裏に蘇る、恐るべきひと時の思ひ出。
博士の指が、ボタンにかかる。
研究員たちが覚悟をきめた其の時・・・。
「博士、そんなことしちゃ駄目ですよぉ!」
博士に顔が引っ付きそうんなくらいズイっと詰め寄るソフィ。
「それに、お弁当は沢山作ってきましたから、皆さんで食べましょう♪」
ソフィはそのままの姿勢でニッコリと微笑む。
かくして、ソフィの笑顔の破壊力の前に研究所の全職員を集めてのランチタイムが開催される事となった。
研究所には、全部で20人ほどの職員たちが勤めており、施設の規模の割には少ないのだが、それでもソフィの作ってきたお弁当だけでは足りなくなるのが必須である。
しかも、研究にかまけてばかりで普段食事に頓着無い欠食者ばかりである。まともにやったんじゃ、到底追いつかない。
「うーん。どうしましょうか・・・」
お弁当を前に考え込むソフィ。
「そうですねぇ・・・では、こういうのはどうでしょう。」
博士がソフィに提案する。
「この研究所には、実はレストランが在るんです。完全オートメーションの料理は味気なくて結局使われてないんですがね。材料と道具は一通りそろっているはずです。」
「えと、じゃぁそこで私がお料理いたしますね。ん〜。でも、私一人で間に合うかなぁ?」
「それなら・・・。」
と、博士が手近の端末から何らかの指示を出す。
数分後、エンサイクロペディアがジャドを伴ってやってきた。
「博士。研究を中止するほどの、御用とはなんでしょう。」
「うむ。今から君たちにはソフィの手伝いをしてもらいます。」
「・・・・・・博士。手伝いとは一体?」
エンサイクロペディアの質問に答えたのはソフィであった。
「あの、実はペディちゃんには私と一緒に、みんなのお昼ご飯を作って欲しいのだけれど・・・駄目、かなぁ?」
「駄目も何も、其れが博士からの命令ですのでお手伝いをさせていただきます。」
「ありがとー! ペディちゃん。」
ソフィがエンサイクロペディアの手を取りぶんぶんと振る。
「では、やりますよぉー!」
ソフィーはエンサイクロペディアを伴い、元レストランへと消えていった。
「ジャドはいかないのですか?」
博士がジャドに聞く。
「くだらん。私は仕事に戻る。」
其のセリフを最後に視界から完全に消えるジャド。
「なんだ、結局行くんじゃないですか。」
くすりと笑って、博士は誰もいなくなった自分の研究室に戻るのであった。

・・・

「う、うまいー!」
「あぁ!! 僕はこのまま死んだっていいー!」
中庭で次々とあがる歓喜の声。
「えへへ。喜んで貰えてよかったですー。でも、作ったのはほとんどペディちゃんなんですよー。」
「いえ、私はそんな・・・言われた通りにやっただけですから・・・。」
私は、ちょっと困ったような表情をして、答える。
少し離れたところで、博士とヤギゾーが其の様子を眺めている。
「ねぇ、やぎちゃん。エンサイクロペディアのシステム調整をしている君から見て、あの様子はどう思うかね?」
「実にイレギュラーだよ。だがいい兆候かな?ソフィちゃんが来てから少しづつ変化があったと思うよ。」
「エンサイクロペディアはジャドとは違って、自立型ではないからね。ソフィから色々学習して、きっとどんどんいい子になっていくよ。」
「まるで、ジャドがいい子じゃないみたいな言い方だね。」
「せて、なんのことですかな?」
博士がにやりと微笑むのであった。
あいかわらず、研究員たちはソフィにべったりである。
人だかりの中心で、ニコニコ微笑むソフィ。
明るく、暖かい、中庭の日向での幸せな昼下がり。
例え、塀の外にどんな荒廃した世界が広がっていても、そこだけは、いつまでもいつまでも平和で・・・。
そんなときがいつまでも続くと、思っていた。
いつまでも、いつまでも・・・。
私はこの施設の、ホストコンピューターだった。
この施設の全てを統括し、全てを見つめる。
エンサイクロペディアという、かりそめの命と体を与えられて、自由を手に入れた。
ジャドという、家族も与えられた。
私の創造主は、私にとても優しくて。ジャドも私にはとても優しくて、暖かくて。
それでも何か、全てを客観視してしまう自分がいた。
この世の全てが私を阻害しているように見えて、感情の無い機械を阻害しているように見えて。
でも、そんな私に初めて感情を与えた少女がいた。
それは、簡単な事。私を、一人の人格として扱い、友達として接するという事。
私はそのときに、幸せを知る事になる。でもそれは、同時に悲しみを知る事でもある。

・・・

それはソフィが、研究所にやってきて5年目の事。
研究所に一人の人間がやってきた。
スーツを着た其の男は、始終ニコニコしていたが、酷く嫌悪感を誘った。
「おや、企業の方がいらっしゃるなんて珍しい。」
博士が、応接間で対応している。
男は笑顔を崩さずに、博士に切り出す。
「博士にはこの度、アーカディア博士から託された物質の我が社への研究データの提出を求めます。」
「さて、何の事ですかな?」
「しらばっくれても無駄ですよ博士。裏は取れていますから。」
一瞬、博士は表情を曇らせる。
「あれは、親友から託された個人的な研究の対象でしてね。渡すわけには行きませんな。」
「・・・そうですか、では少し話を変えましょうか。アーカディア博士夫妻のことです。」
男はすっと身を引く。
「5年前。パイオニア1にのって、出かけたアーカディア夫妻ですが、先日パイオニア1当局から連絡がありましてねぇ・・・お亡くなりになられたそうです。」
「な・・・に?」
博士が立ち上がる。
今にも男につかみかからん勢いだ。
「どういうことだ!?」
博士には珍しく語気が荒い。
「パイオニア1は表向き、新天地の開拓をしに行きましたが・・・その実、外宇宙の優れた生命体の力を利用するための研究を目的としているのはご存知でしょう?」
男が、一枚の封筒を差し出す。
中には、何枚かの手記とおぼしき書類と博士当ての手紙が入っていた。
「アーカディア夫妻の家から見つかったものです。」
そこには、ラグオルでの現状、研究データ、そしてその応用方が事細かにかかれたレポート。
そして、其の危険性を示唆する内容の文章であった。
「そこの手紙にこうありますね。『ラグオルから飛来したと思われる例の物質は、危険ですから処理してください』って、私どももむざむざ処理させるわけにも行きませんからね、アーカディア夫妻が研究データを抹消しようとしたので、データの保護をさせていただこうというわけです。もっとも、夫妻は事故で『たまたま』お亡くなりになったため未遂ですみましたがね」
「そう・・・ですか。・・・ジャド、出て来い。お客様にお引取り願え。」
どこからか音も無く現れた漆黒のヒューキャストが其の手に鎌を転送する。
其の目に感情は無く、男の傍らに只静かに佇んでいる。
「そうですか。我々としてはなるべく穏便な方法で、ことを済ませたかったのですが・・・。致し方在りません」

・・・

男が去った後、数日のうちに博士はソフィを軍部の開発部門へと転属させた。
半ば追い出されるような形で転属する事になったソフィーは、うちひしがれそれでも、諦めきれず住み慣れた研究所へと戻ってくる。
博士に理由を聞こうと、自分を遠ざけた理由を聞こうと。
彼女がゲートに自分のIDをかざす。しかし其れは作動しない。
自分に良くしてくれていた、受付の女性にインターホンで博士への面会を希望する。
しかし、ディスプレイの向こうの彼女は悲しそうな顔をして、首を横に振るばかりであった。
ソフィが、諦めて帰ろうと刹那。彼女は、背後の施設から爆音を聞く。
其の正体を確認しようと、ソフィは爆発で空いた塀の隙間から中へと入っていった。

・・・

研究所内では、研究員たちがそれぞれ武器を手に戦っている。
戦っている相手は、エンサイクロペディアである。
外部からのハッキングにより、其のデータを書き換えられた彼女は其の手に流線型をした不思議な銃を携え、研究所内を破壊していく。
マシンガンを連射する所員達。彼らも素人ではない、それなりの訓練を受けハンターとして十分やっていける者たちである。
が、エンサイクロペディアの手にした武器が展開し打ち出された巨大な光の槍に、ひとり、またひとりと串刺しにされて、いき絶えていく。
と、そこに漆黒のヒューキャストが鎌を携えてやってくる。
「エンサイクロペディア。この命に代えて貴様を止める。」
感情のないひとみをジャドへ向けるエンサイクロペディア。次の瞬間、ジャドに向けて光の槍が打ち出された。
避けるジャド。しかし限界もある。
一発、二発と喰らい、既にジャドのボディには幾つもの大穴が空き、限界も近かった。
「やはり、手加減は無理・・・か」
そう言うとジャドは今までに無いほどの勢いでエンサイクロペディアへ突っ込む。
呪われた鎌の呪われた其の力。ジャドは、自らの最後の命を持って、其の刃をエンサイクロペディアの薄い胸へと突き立てた。
機能を停止するエンサイクロペディア。
「・・・ごめんな。こんな方法でしか貴様を救えない兄で」
其の背中から、腹から貫通した無数の光の槍をまるで翼のように生やして、漆黒のヒューキャストは自ら破壊したレーゾンデートルを抱き、機能停止するのであった。

・・・

「・・・君の仕業か。」
研究所最深部。
博士が一人の古参研究員の前に愛銃を構え佇む。
「ふふふ。だって君があれの研究を中止するなんて言うからだよ。君のせいでみんな死んだんだ」
フォニュームは狂気の笑みを浮かべながら、泣いていた。
「博士が、あんなこと言うから、僕は企業の申し出に乗ったんだ。」
「それで、エンサイクロペディアを暴走させたのかい。」
「いいや、違うよ。・・・僕はエンサイクロペディアの機能を停止させて例の物質の封印を解いただけなんんだ。そしたら、可笑しいんだよ?」
くっくっくと、体を折り曲げて彼は笑う。
「あんな、一かけらの物質が、コンピューターのハッキングを始めたんだ、笑っちゃうだろう!」
笑っていたのでなくて彼は泣いていたのだった。
「だから、僕は僕の責任を取る。この施設ごとあの忌まわしき物質を埋葬する。博士は逃げるんだ」
「・・・付き合いますよ。長い付き合いですから。」
銃を収め博士がふぅっと、溜息をつく。
「それはありがたいけど・・・そうもいかないよ。」
彼は視線を部屋の入り口へと向ける。そこにはソフィがいた。
「ソフィ!?何でこんなところにいるんです?」
ソフィに駆け寄る博士。
「博士に・・・わけを聞きに。」
「そ、それは・・・」
博士がうつむく。
「ソフィちゃん、博士を苛めないでやってくれ。全て君のためにやった事なんだから・・・」
真実が人の心を殺す事もある。
・・・そう、心の中だけで呟いて、フォニュームは煙草をくわえた。
彼は、ふぅっと、煙を噴出す。
・・・が、彼の口からは煙の代わりに大量の鮮血がほとばしる。
「・・・えっ?」
彼の胸を貫く光の槍。
崩れ落ちたフォニュームの後ろには鮮血に其の身を濡らした青いレイキャシール。
その胸を鎌で貫かれながら、未だ其の体を引きずって動いているエンサイクロペディアが銃口をソフィへと向けた。
鎌には、肘から千切られた黒い右腕がぶら下がっている。
「ペディちゃん・・・これは、一体どういうことなの博士!?お願い答えてください!!」
銃のボディが展開され銃口に光が集まる
「ソフィ・・・今は逃げるんです!」
そう言うと、博士はソフィと、エンサイクロペディアの間に立ちはだかる。
「さぁ、早く!! この施設が崩れ落ちる前に!!」
「そんな、一緒に!」
すると、博士はくるりとソフィに向き直り、その場にゲートを開くと、そこへソフィを半ば強引に押し込む。
転送される刹那。ソフィが最後に見た映像は、其の身に光の槍を突き刺されながら自分に優しく微笑みかける博士の姿であった。

・・・

ペディはソフィの部屋で目を覚ます。
シティで気を失って、ここまで運ばれたのであった。
「気が付きましたかペディ。」
心配そうにケイが覗き込む。
「博士、私どうしましょう?」
ペディが其の顔を悲しい笑みで彩る。
「・・・全部、全部思い出しちゃいました。」

つづく

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やぎぞーさん、ペディのレベル上げのお礼のお約束、確かに果たしましたぞー。見てますですカー?
さて、皆様いかがでしたでしょうか?
読みにくかったですか、ごめんなさいー!
今回は書く事も無いので、近況報告とかします。
最近はぺでぃちゃんで、あっちをぶらぶら、こっちをぶらぶらしておりまする。宣伝をかねましてですがW
今夜もぶらぶらしておりますでしょう。
んー。折角ですから数少ない読者様と一緒に遊んで見たいですねー。
よし、遊ぼう!!
ってなわけで、緊急企画!!
ペディちゃん、ありがたき読者様との集い。ONLINE!!
を企画します。
日時は今夜11時から。
場所は、9−8−7で、ペディちゃんがいます。
多分。
あぁぁぁあぁ・・・ゴメンナサイー。きっと誰も来てくれないけど思わず書いちゃいました。それでも私はいきまするー。
一杯一杯だったら、一つづつしたのロビーへっていうことで・・・
休みの日だから無理でしょうか?
・・・まぁいいです。w
ご感想と、会えることをたのしみにしておりますーそれでわw
楽しいひと時を送れますように・・・


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