博士の理不尽な日常 第壱話 kei


小説を書いてみました。


文章を書いたりするのは得意ではないのですが。
色々と触発されまして、思わず少し書いてしまいました。
へたっぴですが、呼んで感想くれるとうれしいです。
それでは・・・

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薄暗い部屋の中、ごぼごぼと怪しげな音を立てる試験管、緑色に発光するゲルの入ったビーカー。
その他得体の知れぬ実験装置や薬品に囲まれて黙々と作業をする一人の人物・・・年齢や容姿はその風貌からは、読み取れない。
潜水服のような不恰好なレイマー用のユニフォームを頭からすっぽりと身にまとい、そのガスマスクのようなヘルメットによって
顔を窺い知る事も出来ない。ただその肥満といっても差し支えないほどの巨体から発せられる下品な笑い声によってのみ、
その人物が人間の男である事が分かる程度である。
「ぐふふふふ。ついに・・・ついにやりましたぞぉ!これで私も大金持ちです!!」
突然、彼は喚起の雄たけびを上げた。どうやら実験は成功のようだ。
「博士ぇ〜。そろそろお茶にしませんかぁ?」
そこへ一体のレイキャシールがお盆に湯気の立つ茶碗を乗せて入ってきた。
「これで、このお茶も13回目ですが、まだ出るもんですねぇ・・・」
彼女はにっこりと微笑むと、彼の実験室にさらに足を踏み入れる。
「ぺディ!そこにはコンセントが・・・!!」
「へ?」
博士といわれた先ほどの男が言うが早いか、そのぺディと呼ばれたレイキャシールはコードにつまずき、
お茶を撒き散らしながら実験装置に向かって全力で転倒する。
次の瞬間、強烈な閃光と破裂音があたりを白一色に染め上げた。

博士の理不尽な日常
第壱話「ジャドの理不尽な一日」

総督府をランドマークとしたパイオニア2きってのシティ区画、Ship,01「lo」。
その中でも、もっとも華やかとされるBlock1は、つねに人の活気があふれるメインストリートと呼ぶにふさわしい場所である。
総督府に近い事もあってか、セキュリティは万全。どこをとっても、清潔で、繁華街に良くある混沌とした雰囲気も感じさせない。
当然その区画では地価も高く、またそこに居住するにはそれなりの審査を有する、ましてや市民IDを持たぬものなど・・・
とまぁ、そういう場所である。

その一区画で、突如として謎の大規模爆発が起き、半径100メートル四方が穿たれ、船体基部が見えるほどの大穴があいていた。
昼のメインストリートは一気に混乱に陥る。
閉鎖的空間。しかも、宇宙船内部においての大規模な災害は、船全体の破滅に直結しかねない。
いかに長く宇宙船での生活を経験していようとも、これほどの爆発事故は未曾有である。しかもよりによって場所が場所であった。

人々はパニックに我を忘れ、逃げ場所などないのにどこかへ避難しようと、一気にテレポーターへ押しかける。
そんな人の波のなかに、先ほどの男と、レイキャシールの姿があった。彼らも、テレポーターに向かっているようである。
しかも、パニックに陥った人々に一歩足りとも引けを取らぬ・・・いや、其れを上回る傍若無人っぷりである。
人の波を掻き分けるなんて表現が生ぬるいと思われるほどの勢いで、前を行く人間を手当たり次第、そこらに放り投げながら
猛スピードで突き進むかれらの後にはまさに惨憺たる光景が演出されていた。
「博士ぇ。今回は何をやらかしたんですか?」
レイキャシールが人を両手に一人づつ掴み高々と掲げながら聞く。
「私は何もしておらぬ!」
「では、何で逃げるんですか博士?」
人々を脇へ放り投げながらレイキャシールは続けざまに質問を浴びせる。
「ぺディが、私の作った合成スターエセマイザーに突っ込んできて、シップに大穴空けたからです!」
「ごうせいすたぁえせまいざぁ?」
「そうです。私が一攫千金を狙って作ったスターアトマイザー風の薬品なのです。詳しくはアレですが、あれを売れば大金持ち確定のすばらしい逸品なのです。」
「・・・博士、其れって犯罪じゃ?」
「ダマらっしゃい。それも、世界を救うための礎になるのです。・・・それに政府の圧力なぞ私の頭脳にかかればいちころです。」
「博士、素敵(はぁと)」
「ぐふふふふふ・・・・・」
そうして彼らは、屍の山を構築しながらテレポーターへと消えていくのであった。

・・・

「では次のニュースです。本日昼過ぎ、総督府付近で謎の大爆発が発生しました。
幸い、爆発の起こった場所は倉庫地区で、爆発による直接の被害者は無かった模様。シップにたいする影響も問題になるほどではないとのこと、
しかしながら、爆発によってパニックになった市民がテレポーターに殺到し、負傷者が多数出た模様。また、そのテレポーター付近で、
他の人間を放り投げ、不穏当な発言をしながらのろける、レイマー風の男とレイキャシールの不審な2人組みが目撃されており、
現場付近の倉庫で薬品類が連続で窃盗されていた事と目撃者の証言より、政府ではこの2人を犯人と断定。現在、血眼で捜査中とのことです。」

「・・・まったく物騒な事だ。」
自分の部屋でテレビを見ながら、ヒューキャスト・ジャドはポツリと呟いた。
彼は名うてのハンターであり、漆黒のボディは同業を含む多くの人間にとって者によって畏怖され、紫紺の輝きを呈す彼の大剣は破壊の象徴とまで言われていた。
そんな彼も今はメンテナンス中である。
ニュースがスポーツ情報を流し始めた。彼はチャンネルを変えようとして、はと気が付く。聞き流していたニュースの中のワンフレーズがメモリーから呼び起こされる。
「レイマー風の怪しい男と、レイキャシール・・・?・・・まさかな。」
彼は古くからの知り合いを思い出すと、自分のあまりの同様ぶりに、ふっと鼻で笑ってテレビのチャンネルをかえた。

ピンポーン。

そのインターホンが聞こえた刹那、彼は自慢の大剣を玄関に向かって振るう。
真っ二つになって吹き飛んだドアの向こうには宅配便のエージェントが床にぺたんと座り込んでこっちを驚愕した表情で見ている。
「あぁ、すまん。サインか?ここでいいんだな。よし、もう用は済んだろう?さっさといけ。」
宅配便のエージェントは抜けた腰で何とか立ち上がるとラッピーもびっくりのスピードで、逃げていった。
「・・・俺もどうかしているな、全く。あまりにもタイミングが良すぎるから・・・」
彼の部屋は総督府に間近い高層マンションの最上階で、階下を眺めるとシティが一望できる。彼だからこそのロケーションだ。
先の爆発でもたいした被害が無いところを見ると相当の強度を誇る建築物なのであろう。噂では、軍部や総督府の幹部も住んでいるとのことである。
さすが、といったところであろう。
ジャドはセンサーを解放すると、地上に意識を集中した。
(だから嫌だったんだ!漆黒のジャドの家なんかに届けるなんて・・・)
先ほどのエージェントが同僚に文句を言いながら車を発進させているところだった。
「またエンストしたか。そんなにあせらなくてもおいかけることなぞは無いんだがな。」
ジャドは手元の端末から新しいドアを注文すると、届いた小包を見た。差出人はは製薬会社の名前になっている。
「試供品か何かか?」
「その通りなのです。」
ジャドは一度収めた大剣を、神速で抜くと振り向きざまに其のまま横一線に凪いだ。
ギィンという、甲高い音とともに彼の剣は止まる。
「いつ進入した。」
「ふふふ、手荒い歓迎ですねぇ。この程度のセキュリティ私にかかればほれこのとおり。」
男の後ろでスプリンクラーが勢い良く水を撒き散らしだす。
シールドを展開する青いレイキャシールの後ろで、男はにやりと笑った。
「何しに来たこのインチキ博士が!」
彼にしては珍しく語気が上がる。このマンションのセキュリティレベルを知っている彼は、
内心、男の完璧な侵入に舌を巻きながらも、剣にさらに力を込める。
「何って、いえ少しお世話になりに来たのですよ。貴方もご存知でしょう?総督府の大爆発。」
「それがどうしたんだ?」
「私のラボも一緒に消し飛びましてねぇ。ここに暫く住まわせてもらおうかと。」
「断固として断る。」
彼は静かに言い放つと剣気を今までと比べ物にならないほど増大させる。それは、自身の生命力を削ってくりだす最大の一撃で、
その破壊力たるや、小型のクレーターを生み出すほどである。
「ふふふ。そうですか、ところでいいかげんペディを苛めるのはやめた方が宜しくないですか?その小包の中身。私が作った物なのですが・・・」
「・・・まさか!?」
彼は、愛剣を放り投げると先の小包を手に取り窓の外に全力で放り投げる。
「ふふふ、まるで昼間のようだ。」
居住区のドーム天井に大穴を空けながら小包は大爆発した。
「ふぅ。疲れました〜。さすがにつぶされるかと思いましたよ、博士ぇ。」
レイキャシールが疲弊しきって、一言漏らす。
「文句ならばジャドにおっしゃって下さい。」
「ケイ・・・貴様今度はなんだ?」
同じく、渾身の一撃を繰り出し疲弊しきったジャドが問う。
「さっきののこと小包ですか?あれは試供品と申したではないですか。私の作成したスターアトマイザー風の薬品、合成スターエセマイザーです。
日ごろの感謝の気持ちもこめて、貴方に贈呈させていただいたのですよ。」
命を削る一撃の後のダッシュはさすがに答えたらしくジャドの言葉にはもう覇気が無い。まして彼はメンテナンス前である
(どうしたら、スターアトマイザー風の薬品が大爆発を起こすのだろう)
と、今となっては意味の無い素朴な疑問に思考をめぐらしながらジャドは意識を失った。

・・・

「ジャド様、朝食が出来てますよぉ?お召し上がりになりませんか?」
ジャドは目を覚ますと、目の前の光景に半ばあきらめ。そして、昨晩の事が夢でなかったことに、絶望した。
ダイニングではケイ・・・件の博士の名前だが、がコーヒーカップを片手に新聞を読んでいた。一面記事は勿論、昨日の爆発事故である。
「やぁ、ご起床ですな。おはようございます。」
ケイはにこやかに・・・といっても、その顔はヘルメットにさえぎられ見えないがジャドに朝の挨拶をした。
「色々と質問させていただこう。」
「おやおや、起き抜けにお元気かつ不躾なことですなぁ。」
ジャドはケイの前に腰を下ろすと、眼光鋭く彼を見据えた。
「エンサイクロペディア、俺にもコーヒーを。」
「ペディでよいですよ。はいコーヒーです。」
エンサイクロペディアとはレイキャシール・ペディの正式名称である。
ジャドは、香ばしい香りのするコーヒーを一口すすると、質問を開始した。
「まず、昨日の爆発は貴様のせいか?」
「断じて違いますよ。そこのペディの責任です。」
「ううぅ、ゴメンナサイぃ〜。」
泣きながら凹む、ペディを尻目にジャドは続ける。
「おおかた貴様の作った昨日の薬品の実験装置に、エンサイクロペディアがコードか何かに引っかかって突進したのだろう?」
「すごぉい!ジャド様エスパーみたいたいです。」
ペディが感嘆の声をあげる。誰にだって想像のつきそうなことだ、と思いながらジャドは、横目でペディを一瞥した。
「ふふふ。凄い威力でしょう。私のグランツの素は。」
「ふん。スターアトマイザー風の薬品じゃなかったのか?まぁ、幸いにも爆発による死傷者は無かったそうだが・・・
パニックになった市民に相当数の怪我人が出たそうじゃ無いか。人を放り投げるとは感心せんな。」
「それも、私のせいではありませぬよ。投げたのはペディです。」
「そんな〜。博士がやれって・・・」
「私は、道を作れとは言いましたが投げろとまではいってませんよ。それをあんなにも・・・投げられた人たちはお気の毒なことです。」
「そんなぁ。」
「ふん。結局は貴様らの仕業か。」
コーヒーカップを弄ぶケイをにらみつけると、ジャドはそう吐き捨てた。
「で、怪しい研究室を吹き飛ばされたから、おいてくれと。しかし良く貴様のような奴があんな一等地に住めたものだな。審査も並大抵ではなかろう。」
「あやしいとは心外な。審査なら何、私の頭脳を持ってすれば目の粗い笊のようなものですよ。あーんな手やこーんな手段で一発なのです。」
ガスマスクの隙間からストローを突き出してコーヒーをすすりながらしれっと、ケイがこたえる。
「・・・まぁいい。置いてやる。」
少しの間の後、ジャドがそう発した。
「・・・!さすがジャド。私の旧友だ。」
「・・・但し、ここではないがな!」
そういうと、彼は腕のコンソールを操作する。ケイの足元がパカっとわれ、彼は下の階に落ちていった。
「ぬぅ!なんですとぉ!?」
「そこは侵入者用の監禁室だ。職業柄うらまれる事が多いのでな。そこに好きなだけ居るがいい。」
「なんか、いますぞ!?ぐぁ!?ぬめっとしたぁ!?くらいよぅ怖いよぅ。」
ずいぶんの間が会った後、何かの粉砕音がし、その後ケイの悲鳴が聞こえた。
「あれ、博士はどこにいかれました?」
コーヒーのお代わりを持ってキッチンからペディが出てくる。
「エンサイクロペディア、奴が心配か?ならば貴様も行くがいい。」
ペディは首をかしげて笑顔をつくる。わけがわからないようだ。
「ジャド様、それはどういうことで御座いましょう?」
ペディはジャドに向かって歩を進める。ジャドはにやりと顔をゆがめると先ほどと同じようにピッとコンソールをいじる。

バタン!

「あーれー」
「くそう、ケイめやりおったな。」

奈落に落ちる二人。
「ぐふふふふふふ。天才を陥れようだなんて、甘いですなぁ。貴様が寝てるうちにセキュリティに細工をしていたのだよ。」
穴のそこでスライムに弄ばれながらケイは一人悶え、ほくそえんでいるのであった。
一方、無限に続くのではないかと思われる竪穴を落ちながら、ペディは思った。
(これってきっと博士の仕業なんだろうなぁ。でも結局自分まで落ちちゃってるし、あんまし意味ないです。)
そして、ジャドは自分の不運を呪い。自分の作った絶対難攻不落の監禁室からの脱出方法を模索していた。
(俺も今回は駄目かもな。)
彼の人工知能も脱出に対する計算を放棄し、衝撃に備える事を最優先に活動し始めたようだ。

「ぐふふふふ。さぁいらっしゃい!」
ケイは相変わらずスライムに埋まりながら高笑いするのであった。
「ぬぅ。病み付きになりそうですぞ。」

第2回へ。

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最後まで読んでくださってありがとう御座います。
きっと色々、校正すべきところがあったことでしょう
本当に中途半端で申しわけないです(^^;
今回は第一話と言うことで、プロローグ的にいろいろはぐらかしながら書きました。・・・がいかがだったでしょうか?
こんなんでも、もし続きが読みたい。なんてことが万に一つも御座いましたら、是非感想を下さいませ。宜しくお願いいたします。
それでは、お目汚し失礼致します。


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