博士の理不尽な日常 第弐話 ver1.2 kei


皆様コンバンワ。
えと、まず皆様に謝らせていただくことが御座います。
実はこの記事、前に一度投稿されたものなのです。
昨日の朝方、実は第壱話をアップした時点で既に書きあがっていた第弐話に、少なからず不安を覚え、人目に余りつかない時間にアップさせていただいたのです。
そうして私は、幸運にも貴重なご意見をいただく事が出来、
 *リニアさん、リュウエイさん多謝です!(><)
少しですが加筆修正を加えました。
もし、消したほうが良いようならば、その旨レス下さい。
出来うる限りはやくけさせていただきます。
えとそれから、大分へたれた第一話は
http://pso.dricas.ne.jp/bbs/p/pso/413/sqqlly/index.html
にございます。もし宜しければ読んでやってください。
それでは・・・・

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実際には数秒にも満たないだろう。そんな刹那の時間であったが、2人のアンドロイドには無限とも思える時間であった。
「やっと、奈落の底か。」
漆黒のヒューキャスト・ジャドは脚部のアブソーバーを最大にして衝撃に備えた。

博士の理不尽な日常
第弐話「暗闇の追撃」

ズン!

鈍くそれでいて巨大な音を立て、ジャドは竪穴の底に膝を突いて着地した。
みしり、と空間そのものをゆがますかのような怒気のこもった音をさせて立ち上がる。
そして彼は何事も無かったかのように周りを見渡す。さすがは漆黒のジャドといったところである。
並みのアンドロイドならあの高さから落ちればスクラップであったろう。
彼は、自分と同じように落ちてきたはずのレイキャシールの姿を探す。・・・が見当たらない。
「エンサイクロペディア?」
彼の呼びかけも暗い空間の中に虚しく反響するだけである。
「さすがにあの化け物じみたレイキャシールもおだぶつ・・・か?」
彼は自問自答する。しかし、その答えは考えずとも分かっていた。
「そんなわけないか。残念だがな。」
彼は独り言を呟くと、当ても無く歩き出した。

・・・

同じころ、件のレイキャシール・ペディはジャドとは別の穴の底に着地・・・いや、激突してめり込んでいた。
「うぅ。痛いです〜。」
ペディが泣きながら4畳半ほどのクレーターから起き上がると誰とも無く不平を言う。
「また博士に修理してもらわなくちゃ。ぐすん。」
とは言うものの、彼女のボディには傷らしい傷は一つも無い。
「さてと、博士とジャド様をお探ししなくてわ。とりあえずレーダー展開・・・あれれ?」
彼女のレーダーは真っ暗で何も映さない。ジャドが仕掛けたジャミング装置のせいである。
「えと、困りましたねぇ?・・・こういう時は・・・」
彼女は暫く思案した後一つの結論にたどり着いたらしい。
「こういうときは、右手の法則です♪」
そういうや否や、彼女はぺとっと右手を壁にあてがう。
「えい。」

バゴン!!

派手な破砕音をさせて放射線状の亀裂を描きながら砕け散る監禁室の特殊装甲。
ペディはジャド御自慢の監禁室を蹂躙し侵攻していくのであった。

・・・

「どうやら、別の場所に落ちたようだな。」
監禁室の製作者であるジャドには、ペディの居場所の一応のめどはたっていた。
難解な迷宮のようになった彼の監禁室は、マンションの地下に作られており、その落ちる個所もさまざまである。
「・・・しかたない。」
ジャドは嘆息一息、ペディの捜索をはじめた。
途中さまざまなモンスターと遭遇するも、それらを全て愛剣でなぎ払い、
数十分後、自分の仕掛けたジャミングを呪いながらも彼は目的の場所に到着する。
「・・・しかたない・・・。」
先ほどと同じ独り言を、しかしながら先ほどとは比べ物にならない悲哀と意味をこめて彼は吐いた。
そして、再びペディのもとへと瓦礫の上を彼は全力で走り出す。
「・・・今度こそ本当に俺も駄目かも・・・な。」
彼の口調には監禁室に落ちたとき以上の痛々しいまでの絶望が感じられた。

・・・

そうして、さらに数分後、彼は暫く前から聞こえていた断続的な破裂音を間近に聞くようになった。
(・・・近いな・・・)
彼はそう考えるや否や今まで以上にスピードを上げた。
先ほどからの、常軌を逸した酷使により彼の脚部パーツは既に限界である。
しかしそんなことにお構いなく、彼は猛スピードで目前に迫った「右手の法則」を実行し続けるペディのもとに走りこむ。
「やめろ、エンサイクロペディア!」
と、ジャドが彼には珍しい焦燥ぶりでペディの右手を掴む。
「あれ?ジャド様。良かった〜。お探ししていたのですよ〜?」
そういつもの調子でのほほんとペディは答えると満面の笑みを返す。
「さて残るは、博士だけですね。ペディ頑張ります!」
「・・・何?」
ジャドが疑問の台詞を投げかけた刹那、ペディはジャドごと右手を壁にあてがった・・・いや、壁に張り手をかました、といったほうが正しい。
「ぐはぁ!」
ジャドの悲鳴と壁の瓦解する音、そしてペディの掛け声とジャドのボディがあげる明らかに不穏な音。迷宮に木霊する猟奇的なカルテットの中にあっても、ペディは止まらない。
「博士、今すぐペディが参ります!!」
「た、タノム、ヤメ・テ・・・!」
ジャドの悲痛な懇願も今の彼女には聞こえない。
その驚異的な性能の全てを持って、ペディは博士のために張り手を続ける。
迷宮の特殊装甲とともに瓦解するジャドの意識。
(もう本当の本当にだめなんだろうなぁ。意外な最後だったな・・・)
ジャドは薄れ良く記憶の中、確かに死を垣間見たのであった。

・・・

それから何枚もの壁が破砕され、それでもペディの右手を離さないでいたジャドは何度目かの衝撃の後、やっと意識を取り戻した。
ぼろ雑巾のようになりながらも手を離さないでいた彼の執念は、
流石、一流のハンターといったところであろう。。
・・・しかし、彼がそのためにこんな目に会ったのも事実である。
「こんなに・・・ひどい目に・・・あった・・・のは、あいつに出会ったとき以来・・・だ・・・!」
「誰に会って以来・・・ですかな?」
ケイはスライムの群れに埋もれながらジャドに質問した。どうも、スライムの感触が気に入ったようだ。
「博士!今お助けします!!」
ジャドが答える代わりに自らの主人の危機を目撃したペディが答えた。
「あぁ、ペディ。私は別に大丈夫ですよ?」
しかし、主人の危機に混乱しきった彼女のCPUはさまざまな外界からの情報をカットし、
いまや目の前のスライムを駆逐することにのみ集中していた。
「インフェルノバズーカ転送します。」
彼女はそういうが早いか、その細い腕の中に巨大な重火器を召還する。
黒光りする凶悪な砲身が博士を取り込んだスライムに冷徹に向けられる。
一撃必殺の火力が持つ独特の威圧感が、その場の空気までもびりびりと振動させる。
「ペディ。私は本当に大丈夫ですから・・・」
「弾倉装填完了」
無機質な声でペディが告げる。
「あのぉ・・・ぺでぃさん?」
「目標ロックオン」
銃口がスライムの中央。博士の取り込まれた部位へぴたりと絞り込まれる。
「ぺ、ぺでぃぃぃ!?」
「博士、ご心配なさらないでもペディが今すぐにお助けします。インフェルノバズーカ発射!!」
ペディが満面の笑みとともにトリガーを引く。
博士の違法改造によってとてつもない破壊力を獲得したそれは、
醜悪なまで巨大な弾丸を、スライムの群れの中央に発射すると、その全てを非情なまでに蒸発させる。

・・・

「博士?博士ぇ〜?」
ペディは自分で消し飛ばした事に気づかずに、博士の名を呼びつづける。
「これはもう、流石のあいつも無理だろう。」
全てを灰燼と帰された一帯を見回しながら、自己修復が一段落ついたジャドは感慨深げにポツリと呟いた。
「骨ぐらい拾ってやるか・・・残っていればの話だが。」
と、彼らの足元に飛び散った蒸発を免れたわずかの、スライムの残骸がズルリと蠢く。
「!?」
ジャドの動揺を尻目にその蠢きは他の残った残骸にも伝染していき、ついには残った全ての残骸が蠢きだす。
そしてそれらはある一転を目指し、移動を開始する。
「何事だ。エンサイクロペディア、貴様分からないのか?」
「そんなことより博士です〜。博士ぇ〜!!」
そう言ってる間に、スライムの塊は人間ほどの大きさになり遂には、人型を形成し始めた。
「・・・!!」
ジャドが声にならない悲鳴をあげる。
「ふぅ。危ないところでありましたなぁ。全く・・・」
ぶつくさと、文句をいいながら博士は完全復活を遂げた。
「一体どういうことだ。説明しろ。」
ジャドが表面上では落ち着いて、しかしながらやっとの事で搾り出したしごく当然の質問をケイになげかける。
「私が自慢の発明品、スケープワラニンギョウを所持していたからですな。これは回りの有機物を無差別に取り込んで所持者の肉体を再構築する素晴らしいアイテムなのですよ。詳しくは外に出てからに致しましょうか。」
と彼があたりを見渡す。
「博士ぇ!こんなところにいらしたのですねぇ。ご無事で本当によかったぁ・・・。あれ、少し見ないうちにちょっと大きくなられましたか?」
ペディが心からの安堵の表情を浮かべ博士のもとにとてとてと近づいていった。
「えぇ。スライムの構成物を多少多めに取り込んでしまったようですね。あ、ペディそこには段差が・・・!」
「え?」
ペディが首をかしげながら博士の視界からロストする。と次の瞬間、彼女の獲物がその凶悪な火力を発揮する。
刹那、全てが光になった

・・・

「・・・どこかで見たような光景だ。」
ぼそりとジャドが呟く。とっさに、リューカーで脱出した博士たち一行は、瓦礫の山と化した、もとマンションの前に立ち尽くしていた。
(・・・そうか昨日のニュースか。)
彼のメモリーは大爆発の現場を呼び起こすと、其のままフリーズした。
「全くジャドが戦闘馬鹿で助かりましたよ。」
「どういうことです?博士ぇ。」
「つまり、彼はアンドロイドゆえにリューカーの存在を忘れていたのですね。あんな迷宮は役に立たないというのに。」
ぐふふふふと、下品に笑うと博士は機能停止した足元のアンドロイドを見下した。
「結局は頭脳が物を言うものですな。きっといままでも、こうやって多くの人間を逃がしてきたのでしょう。」
しかし、博士は忘れていた。高層マンションの高さと等しい深さの落とし穴の存在を。
・・・まぁ結局、迷宮は無くとも脱出は不可能だったのだから迷宮も確かに無駄ではあったのだろう。
「さて、人が集まりだす前に行きますよペディ。」
「はい博士。でも、ジャド様はどうなさるのです?」
「ほぉって置きなさい。どうせ丈夫な彼のことです。」
「でもぉ。」
ペディが渋る。
「・・・ふぅむ。仕方ありませんね。好きになさい。」
「博士ぇ!!ありがとうございます〜。」
結局、ケイは折れると、ペディをせかす。
そうして、少し大きくなった博士と右手でジャドの頭をわしづかみにしてずるずると引きずるペディは、黄昏の中新しい住処を求め歩き始める。
(博士、やっぱり素敵です〜(はぁと))
ペディはケイの背中をうっとりと眺めるのであった。

第参話へ続く。

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こんなへたれた文章にさじを投げず最後までお付き合いいただきまして大変恐縮であります。また次回も書きたいのですが・・・駄目ですね。
 こんなだらだらと長いだけの駄文をしかも2度にわたりアップしてしまい、本当に申しわけ御座いません。それでも、もし何か思うところが御座いましたらどんな事でも感想ください。お待ちしております。



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