…………………。
「だああッ!!私はどこぞの変態魔導師かッッ!?」 (関係者の皆様ごめんなさい)
頭の中で予行演習してみて、リアラは自分で自分に突っ込みを入れ…慌てて口を押さえる。
ナイツに気づかれてしまったろうか?
おそるおそる様子をうかがってみて………
「あ………もういないし」
ナイツの姿はいつのまにか消えていた。あわてて当てもなく飛び上がるリアラ。
茎を握りつぶされてくたくたになった不気味な花をばらまいているのにも気づかず、リアラはナイツを探し回った。
「うーーーむ………」
森の中、リアラは完璧に自分の位置を見失っていた。
「まいったなこれは……やむをえん、一度出直すか」
パラループの応用で、ごく短時間だが悪夢界への通路を開く技がある。(作者注:絵本版参照)
リアラは手のひらに力を集中し、ここと決めた空間を押し分ける。
鈍い唸り音とともに、陽炎のように景色が歪み始めた。
「………ん?」
そのとき、リアラの視界の隅に、見覚えのある色彩が引っかかった。あわてて手を止めて、そちらに目を凝らす。
「…………………。」
木の枝にかけられた、紫と白の衣装。薔薇色のベスト。
歩み寄ってその向こうに目をやって、リアラは硬直した。
水浴中。
ぶし★←鼻血(作者注:ダメージの視覚的表現)
ナイトメアンの形態は基本的にその能力と性格、あと多少本人の好みが加味されて決定する。
故にナイツとリアラの姿ははどこか似通っていながら正反対という不思議な映り方をするのだが、リアラは自分の容姿を人間で言う〈男性〉寄りに取っているのに対し、ナイツは非常にどっちつかずな―――少年とも少女ともつかない不思議な均衡を持った、中性的な姿でいることを選んでいた。
澄み通った泉に華奢で滑らかなラインをもつ身体を浸す様はさながら水精(ニクシー)、気持ちよさげに水の珠を木漏れ日のなかにはねとばし、ダイヤモンドの輝きの中でナイツは笑う。
「………………………。」
意識真っっ白けで固まっているリアラに全く気づくことなく、ナイツは立ち上がって大きく伸びをした。
「んーっ、いい気持ちだなァ」
ぴ―――――――――――っ☆←脳天沸騰
「……………ん?」
奇妙な気配に気づいて、ナイツは振り向いた。
「……………げげっ!!リ…リアラっっ!?」
ナイツの宝玉を思わせる瞳に映ったのは、血の海(注・鼻血)に沈んでぴくぴくケイレンしているリアラの姿。
さすがに泡を喰らって、ナイツは泉を飛び出した。
「どーした!おい、何があったんだっっ!?」
「う………うう」
抱き起こされ揺さぶられて、リアラは意識を取り戻した。
「ナ…ナイツ…か」
「お前…大丈夫か?」
そこでリアラはおのが状況に気づく。
泉から上がったまま身体も拭かないナイツに抱き起こされている自分。
ぶぱしいッッ。←鼻血+耳血
「リ、リアラあッッ!!どうした、気をしっかり持てえェッッ!!!!」
ナイツの絶叫とがくがく揺さぶられる感触をやけに遠く感じつつ、リアラの意識は闇に呑まれた。